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歯科医院の開業ノウハウ「 適正な人件費率」

歯科医院の経営で最も重要な比率、しいていうなら人件費率です。
医院経営をするなかで、材料費、家賃、水道光熱費、など様々な経費がかかってきますが、
その中でも金額が大きく、かつ戦略的に決めていきやすい項目が「人件費」になります。

今回は「適正な人件費率」の考え方について、解説していきます。



歯科医院経営には2つ特長があり、1つは店舗型来店ビジネスであること、
そしてもう一つが労働集約型ビジネスであることです。

労働集約型ビジネスである以上、スタッフを雇用せずに売上を上げることができません。
しかし、むやみやたらに人を増やしてしまう、働きに見合わない給与設定をしてしまう、
といったことになれば、一気に医院経営を圧迫します。
そこで、「適正な人件費率」の考え方について、いくつかの切り口をご紹介していきます。

■適正な人件費率は20%?

よく経営セミナーなどでは、このような数字を示されることがあります。
しかし、医院規模も違えば、自費率も違う、その中で、一律に20%という基準で考えてしまうことはかえって危険です。
実は増員が必要なタイミングなのに追加採用を抑制してしまったり、
頑張っているスタッフに対してモチベーションを下げるような誤った評価をしてしまったり、
そのようなことになれば、医院はたちまちバランスを崩して蛇行を初めてしまうでしょう。

そこで、今回はいくつかの切り口(パターン分け)で適性な人件費率を考えてみます。

1.ワンドクター医院と勤務医在籍医院

個人医院の場合、院長の給料(生活費)はもちろん人件費としては集計されません。
したがって、院長が寝る間を惜しんで診療し、もしくは自費でどんどん売上を上げたとすると、
結果として人件費率はぐっと下がることになります。

この場合、人件費率が20%に達することは少なく、15%もしくはさらに低い数値となることも珍しくありません。
従って、一概に何%が適正とは言えませんから、チェア台数が変わらず、スタッフ人数も変わらなければ、
人件費というよりも人件費の金額、さらには個別スタッフの年収に着目して、
適正かどうかを見ていく方が理にかなっています。

一方で、勤務医を雇用すると、一気に人件費率は跳ね上がります。
ここで、スタッフ給与と勤務医給与を一緒にして人件費率を分析してしまうと、
勤務医の働きがいまいちなのか、スタッフが効率的に動けていないのか、
その要因があいまいになってしまいます。

そこで、勤務医の人件費率が何%なのか、スタッフの人件費率が何%なのか、と分けて考えることが重要です。
特に矯正医に来てもらっている場合などは、分母となる売上も
矯正売上とそれ以外の売上にわけて、人件費率を算出する必要があります。

2.社保加入医院と未加入医院

色々な考え方がありますが、社会保険(厚生年金)に加入した場合は、
その医院負担分も人件費として合算することをお勧めします。
協会けんぽと厚生年金のパターンの場合は、給与額面の15%程度の医院負担となるため、
人件費率20%だった医院でも、一気に23%に人件費率が上がってしまいます。

これまで20%を適正ラインとして意識していた医院であれば、
社保加入により、その適正ラインを23%までアップさせて考える方が良いでしょう。
これを無理に20%に抑えようとすると、スタッフへ過度な負担がかかることになりかねません。

3.医療法人と個人医院

確かに、20%は歯科医院の人件費率として適正ラインとして当てはまる場合が多くあります。
しかし、医療法人となると、一般的には社保に加入し、
さらにシフトを回すための余剰人員を抱える必要があったり、
事務長的な動きをするスタッフの給与が加算されたり、状況が少し変わってきます。

したがって、医療法人の場合は、25%前後を適正ラインとして、人件費率をウォッチすることをお勧めしています。


4.拡大期の医院と安定期の医院

安定期の医院においては、スタッフの出入りも少なく、売上の増減も少ないため、人件費率は安定する傾向にあります。
したがって、前期比較をすることなどにより、人件費アップの要因が、
売上増減なのか、スタッフ昇給なのか、わかりやすい構造となっています。

一方で、拡大期の医院においては、このような分析があまりあてになりません。
売上が伸びてから増員をしようとすると、その間に既存スタッフが疲弊してしまうため、
先行投資をするというのが定石です。
当然ながら、先行投資をすると、売上が追い付く前に人件費が膨らむため、人件費率は非常に高くなってしまいます。
しかし、この高い人件費率を見て、先行投資をした経営判断は失敗だと言えるでしょうか?
実際は非常に正しい、経営判断という評価となるでしょう。

拡大期の医院においては、将来の売上増加を予測し、
それに見合った人員を先行して採用することが戦略上重要となってきます。


さて、今回4つの切り口で人件費率を考えてきました。
実際にはもう少し細かな分析が必要かもしれません。
しかし、このような落とし穴がある、ということだけでも覚えておいていただき、
今後の経営に生かしていただければと思います。
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